パソコン


 この2ヶ月間というものパソコンのない生活をしてきた。
ウイルスにやられて接続ができなくなってしまったのだ。そんなわけでこの2ヶ月間、ご無沙汰しました。
私のパソコンも約5年、ろくにメンテナンスもしなかったのによく働いてくれた。2度、ウイルスにやられて再インストールしたが、知識がないのと面倒なのでそれ以上、ろくな手当てもしていなかったのだ。
次にだめになったら新しくしなくては・・と考えることもあった。

しかし、スペインは日本より遅れているので、機種も古いうえに値段も高い。それになにより全部スペイン語だ。日本人の友人からは「ウインドウズのソフトを持っているから自分でインストールすればいいのよ。貸してあげる」とよく言われたが、実際にその作業を自分でできるとは思えなかった。その点、息子は学校でもパソコンの授業を受け、基礎を勉強している上に言葉の問題がないから気楽だ。

「わーい。新しいパソコンを買ったら○☆♪α?ができるかなぁ」などと簡単にのたまってくれる。私には何のことだかさっぱりわからなかった。
そうこうしているうちに、本当にだめになってしまったのだ。思えばしばらく前から、毎日のように何通も明らかにウイルスメールだろうというのが送られてきていた。数えてみたら10通をくだらないこともあったのだ。気をつけているつもりだったが、そのうちにやられてしまったようだ。それにしても誰が何の目的でそういうことをしているのだろう・・
そういうことをすると何かおもしろい事があるのだろうか?それとも何か特典でもついてくるのかしら?手間もひまもかかるだろうに、まして私なんかにまでわざわざ送ってくるなんて。どうしても理解できない、謎だ。
結局、パソコンは日本にすむ弟夫妻の所に送って新しいものと交換してもらう事になった。

私の場合、パソコン=メール・インターネットのようなものだ。
自宅の電話も携帯電話もあるし、手紙などの通信手段には事欠かないのに、いつのの間にか便利で簡単なメール以外の通信手段は考えられなくなっていた。何しろ私には急ぎの用事などほとんどないし、大昔のように電話で長電話をすることもなくなった。自分にかかってくる場合もそうなのだが、私が長電話をしたいときに相手の都合がわからないからだ。そのかわりメールでやり取りをすることが多くなった。やり取りをしている友人たちもみな同じだ。「メールだったら都合のいい時に読んで返事をすればいいし、自分も好きなことを好きなように伝えられるからいいわ。それに急ぎだったら電話を使うしね。」というのですっかりその便利さに慣れきっていたのだ。

さて、どうなることかと思ったが、正直いって何の問題もなかった。
よくメールをくれる日本の友人達には「パソコンがやられたの。しばらくメールは使えないの」という連絡をすることにしたが、これがなかなか新鮮な楽しみだった。

久しぶりに絵葉書を選んだり、中には長々と手紙を書くこともあった。ますます字が書けなくなり、同時にますます字が汚くなったことを実感させられたが「手紙を書く楽しみを忘れていたなぁ」と思うようになった。
またパソコンのことでいろいろお世話になった弟達の一家とも何度か電話で話すことができた。今まではメールで連絡を取り合うことがほとんどだったのだ。直接は話さなくても電話の後ろで姪のむっちゃんの元気な声が聞こえると私まで楽しくなった。また、うちの息子と弟の声がそっくりなのには本当にびっくりした。こんな発見があったのもパソコンがなかったおかげだろう。

インターネットも使えないから情報も入ってこない!とはじめは悲観的に考えていたが、緊急事態が起こらない限り、私にはどうしても必要な情報などないこともわかった。
例えば、8月にはアテネでオリンピックが開かれ、ほぼ同時に見られる私達はラッキーだったが、ここはやはりスペインなのでスペイン選手がメインになる。日本が金メダルを取った男子体操の団体の時などは、上位に日本がいても放映されるのはスペインと同じグループの演技だけだ。何かの拍子に日本選手の演技が映って「おおっ!」と見始めるとすぐにスペイン選手の演技に変わってしまう。はっきりいって頭にくる!「なんだよー、こんな下手な演技は見たくないよー」と八つ当たりする。こんなときネットで検索すれば情報が入ってきたのだろうが、仕方がないから私達はスペイン人と一緒にスペイン選手を応援し、日本ではマイナーな競技を見ることになった。しかし、これも一興、スペインにいなかったらこういう楽しみ方はできなかったわけだ。日本に比べたらスペインのメダル数は格段に少なかったし、オリンピックの場ではあまり目立たなかっただろう。
それでもスペイン人は毎日、オリンピックを見て一喜一憂していたようだ。まあサッカーよりかなりテンションが下がるようだけど。

9月の半ばに再生されたパソコンとフル装備の最新型パソコンとプリンターが我が家にやってきた。息子はすぐにあれこれと使いこなしているが、私はちょっと違った。
パソコンがなくても普通に生活できる事がわかって、かえってパソコンのありがたみが分かったような気がしたのだ。今までは単なる道具でしかなかったのに「なんて頭のいい子!」と感心することしきりだ。以前のように使いっぱなしということもなくなった。
それから、せっかく思い出した手紙のやり取りも続けたいと思うようになった。

今年のスペインは、去年とうってかわってあまり暑くならなかった。9月の声を聞くと朝晩は涼しくなり「夏はもう終わり?」という気分だった。
反対に日本は猛暑だったとか・・
たまにはパソコンを使わない日々もお勧めします。