薔薇水


生れて初めて薔薇水を作った。先週のことだ。
少し前に友人から電話があり、薔薇水の話になった。彼はマドリッドの郊外の住んでいて手作りが大好きだ。今、庭に咲いている薔薇の花を使って薔薇水を作るのだという。

「それは、それは、香りが良くて肌に染み込むみたいなんだから」となんだか美容部員のような事をいう。私が「おばさんにも効くの?」というと私より年上のくせに彼は「だーいじょぶ、くそババアにも効いちゃうから」と言うので大笑いした。

男性なのにヘンな人、と思わないで欲しい。彼はヘア・メークアップアーチスト、つまりはその手の事に関してはプロなのだ。

その話を聞いたあくる日に会社に行くと、私の机の上に見事な大輪の薔薇が土瓶に挿してあった。ホセ・ミゲールと奥さんのモニカが「うちの庭に咲いているのを持ってきたの」とプレゼントしてくれたのだ。
絹地のような黄色と紫に近い赤の薔薇は、それは良く香った。あまり香りが高いので下を向いて仕事をしているとむせるほどだ。その日は一日、とてもゴージャスな気分で仕事をする事が出来た。
丸一日が過ぎると、いよいよ重みに耐えかねて薔薇の花びらが散りそうになった。

ちょうどそこに例の友人が、職場に立ち寄ってくれた。
「わーすごい!こんなに良く香る薔薇だったら素敵な薔薇水ができるよ」と誉めてくれたので早速作り方を教わった。

薔薇水の作り方
密封できる広口ビンを用意して薔薇の花びらをちぎって入れる。
その上にカモミールの花、さらにローズマリーの葉を同量ずつ重ねる。
これで3段の層になったはずだ。そうしたら上からスペインだとアグア・ディエンテ、日本だと焼酎を上まで入れてふたをする。

大体3ヶ月以上置くと素晴らしい薔薇水ができる。
このレシピのカモミールの花とローズマリーの葉は乾燥したものを使う。が、彼は庭にたくさんローズマリーがあるので「僕は生の葉を使うよ」と言っていた。

仕事の帰りに隣にある自然食品店によってカモミールを、デパートでアグア・ディエンテを買って帰った。残念ながら、ローズマリーはどちらにも売っていなかった。

さっそく聞いたとおりに薔薇水を作り、優雅な気持ちになって見ていると、みるみる透明のアグア・ディエンテは赤い薔薇色に変った。

うれしくなって飽きずに眺めていたが、どうしても手に入らなかったローズマリーが気になって仕方がない。このローズマリーやラベンダーはマドリッドでも色々なところに生えている。もちろんきれいに植えられているところもあるが、半分は雑草のようなものだ。思いついて近くの公園まで出かけてみた。

すると公園に入る前から周りにはラベンダーとローズマリーがボサボサ生えていた。
これも良く香るローズマリーを摘んで、意気揚揚と家に帰りさっそく薔薇水のビンに入れておいた。これで完了。あとは待つだけだ。
そういえばスペインに来てから4年、こういう手作りはしたことがなかった。なんだかおままごとでもしている気分だ。
そういえば、子供のころ庭に咲いていたいろいろな花を摘んで水につけ、色水つくりをしたことを思い出した。麦わら帽子をかぶっていたから、夏の事だったかもしれない。

息子が学校から帰ってきた。
「ママ、学校で四葉のクローバーを見つけたよ」と言って、リックの中をごそごそさせている。学校の小さな花壇で見つけて教科書にはさんで置いたのだという。
彼はさっそく押し花を作り始めた。
私達の最近の趣味は「手作り・おままごと遊び」と言っておこう。
ちょっと上品過ぎたかしら。