夏休み到来


とうとうというか、あっという間に6月の20日を迎えて、息子は長い長い(親にとって)夏休みに突入した。スペインに来て、毎年この時期には同じ気持ちを味わう私である。

息子は、今年も7月は学校の、8月はマドリッド主催の林間学校に出かける。
7月が11日間、8月が15日間だが、これでホッとしてはいけない。
9月の半ばまで休みは続くので、林間学校以外に何をするか考えなくてはいけない。

私は当然、毎日仕事があるので相手はしていられない(暑くてめんどくさいこともあるけど)。仕方がないから日曜日は市営プールに行くことにして、後は映画や博物館見学くらいでお茶を濁そうかと思っている。そうそう日本人学校の補習校からいただいた山のような宿題も息子の夏休みをつぶすのに役立ってくれそうだ。


今年になって急成長した息子は、身長168センチで、足のサイズは27センチだ。

横が追いつかないのでひょろひょろしているが、声も低くなっていて、よく見るとうっすらひげも生えている。だんだんおやじ・・失礼、男性になっているのだ。

顔の作りと頭の内容はまだまだ幼いので、私の行くところには、どこにでものっそりと付いてくるが最近はとみに生意気になってきた。

この前はマドリッド市の林間学校の説明会があってその帰り道、私はあまり悔しかったので不覚にも涙をこぼしてしまった。

その日は、私にとって、とても忙しい1日だった。

というのは、昨年は申し込み順だった市の林間学校が抽選になってしまったのだ。
申し込みをして2週間後にもう1度来るように言われたときも、私は何も考えていなかった。当日の朝、出かけてみると受付の壁にリストが貼ってある。
パラパラ見ると息子の名前は最後のページになっていたので、私は担当の人に
息子の名前を言った。彼女は「番号は何番?」と聞くので息子の名前に前に振られていた42番という番号を伝えた。すると彼女は「残念ねー。補欠だわ」と言った。

「えーー!!」慌ててリストを見直すと最後のページは補欠リストだった。

そう定員が40人で、息子は補欠2番だったのだ!
「これはぜったいだめなの?息子はいけないの?」と聞くと「うーん、まあ・・空きがあれば連絡がいくと思うけど・・」という返事だった。

こんなとき「あ、そうですか」と引き下がったらスペインでは後悔する。

結果はともあれ行動しなくては意味がないし、何も変らないからだ。「空きがあるかどうかはいつわかるの?」と確認すると、「たぶん来週くらいだと思うけどね・・」と何となくはっきりしない。スペインでは、こういう時ほど行動することで結果が現れやすい。

一応「わかりました」といってその場を離れたが、私は今日が発表日だから明日か明後日には欠員があるかどうかわかるだろう、と思った。こんなとき上から順に連絡をくれるなんてことはスペインじゃ信じていない。それも電話で確認なんて絶対にダメだ。


私は1日置いてもう一度市役所に行ってみた。

「あのー、林間学校の欠員はどうなっています?」と聞くと、申し込んだときに対応してくれたおじさんが「あー、今のところ3人連絡がまだないんだよ」という。
「で、いつわかるの?ところでうちの息子の名前は・・」と言いかけると「わかってる。わかってる。ところで、今日の午後に説明会があるけど、行けるかい?」というので
「もちろん、行けます!大丈夫」といって説明会の場所や時間の書いた紙をもらってきた。
仕事が終わってから直接、説明会に行く予定にしていたのだが、ちょっと心配になって息子に電話して一緒に行くことにした。もちろん専属通訳のためだ。

待ち合わせの場所に言ってみると息子は「ママが出かけた後、市役所から電話があって林間学校にいけることになったけど、きみのお母さんは今日、説明会があるのを知っているよね」といわれたそうだ。やった!!

説明会は舞台のある公会堂の一室でおこなわれたのだが、広いのに担当者のお兄さんの声が小さくて低いので良く聞こえない。その上、参加した父兄がその度になんやかんやと口を出すので余計にわからない。で、スペイン語もわからない。

それで私は、その度に息子に「え?なんだって?」と聞きつづけた。はじめは息子もぼそぼそと答えていたが、面倒くさいのと退屈なのとアホな母の面倒を見るのがつくづくいやになったらしく「もー、わっかんないよー!」と言って横を向いてしまった。


その後、説明会の不明な点(スペイン語)を聞いてもふてくされた態度でいやいや返事をするので、疲れていた私は説明会終了後についに切れてしまった。


「誰のための説明会だと思っているんだーー!!だいたいあんたが去年の林間学校は楽しかった。また行きたいって言うからがんばったんじゃないの!それなのに、あのふてくされた態度は何なのっ!」と怒鳴ってしまった。

もちろん日本語なので回りにいたスペイン人はわからなかっただろうが、私の剣幕には気がついていたようで、怖いものを見る目で通り過ぎていった人もいたと思う。

切れて息子に怒鳴ったと同時に、私は自分のスペイン語のレベルに情けなくなっていた。仕事や日常的な生活で使う言葉はこなせるが、スペイン語で物を考えることはできないし、ろくな読み書きもできない。そう思うと自分が情けなくなって思わず涙が出てしまった。「鬼の目にも涙」を見た息子はシュンとなって、その後に行ったカフェでも遠慮がちにデカいサンドイッチ一皿しか食べなかった。


さて、説明会にも参加し、翌日は朝1番で市役所に行った。

私の顔を見ると受付にいたおじさんはニコニコして「ラッキーだったねー。欠員は2人だったんだよ」という。「もう一人、補欠の人も参加するの?」と話しのついでに聞いてみると「さーどうかな?」だって。さっそく支払いを済ませてほっとした。

やっぱりスペインでは直接行動が一番だ。黙っていても誰も何もしてくれやしない!

そのためにもスペイン語の勉強をきちんとしなくては・・と反省させられました。