皇太子ご婚約

私は皇室関係のニュースを見るのが大好きだ。

日本の皇室はもとよりイギリス王室のニュースにも興味しんしんだった。といっても、別に追っかけをするわけでもないし、なにかコレクションをするわけでもない。ただ、女性週刊誌の表紙に皇室関係の写真などがでかでかと載っていると、思わず手に取らずにはいられなかったのだ。

中でも、皇太子の結婚関係の記事には並々ならぬ感心を持っていた。しかし最近では、日本の皇太子2人も結婚されてお子様もでき、お幸せに暮らしているらしいので、私の関心は薄れた。一番下の内親王が誰と結婚されるのか・・という事で次々に候補があがったり、消えたりしていたが、私は大本命と書かれた某氏の線が消えてからはますます感心も薄れた。

一方、イギリス王室のスキャンダルにも非常に心惹かれ、ニュースのチェックは欠かさずにいた。ダイアナ元妃が悲劇的事故で亡くなった時は、ものすごくショックを受け、呆然自失状態になってしまったくらいだ。私は愛人と噂されるカミラ夫人が大嫌いなのだが、チャールズ皇太子も苦手なタイプだから後はどうなってもいいさ、とイギリス王室からも足を洗った。ま、次はダイアナ妃の遺児たちの結婚が騒がれるまでは興味は湧かないと思う。

ところでスペインにも王室があり、独身の皇太子フィリッペがいる。彼はヨーロッパ王室の最後の適齢期といわれ、引く手あまただったらしいが、御歳35歳の今まで独身だ。たしか昨年は金髪のスエーデン人のモデル、エバ・サヌムさんと「すわ結婚か」と騒がれた。フェリペ皇太子のために新居が建てられる、マジョルカの別荘も改築が行われるなどの事があった上に、ノルウェーの皇太子の結婚式という場にエバさんが皇太子と同席したので、これは本物かという感じになってきた。

テレビのニュースでも「皇太子が一般の外国人と結婚するのをどう思うか?」等と街頭でインタビューする映像が流れていた。 しかし、皇太子自身が「これからは 二人ともそれぞれの道を進む」と公式に発表したので、4年あまり続いた交際も結婚には至らなかったらしい。

ところが、11月の初めにスペインでは王室系の大ニュースが報道され、私は久しぶりに興奮してニュースのチェックをするようになった。そう、スペイン皇太子 フェリペ・デ・ボルボン氏の婚約が正式に発表されたのです。

婚約したのはスペイン人のジャーナリストでプレゼンターとしても活躍していた女性だった。まったく噂がないうちに密かに事は進行していたらしく、11月の1日を待っていました!と発表された。きっときびしい報道規制がひかれていたのだろう。その日から、テレビをはじめあらゆるメディアでいっせいに報道され、そのニュースで持ちきりだ。
婚約発表の朝、寝ぼけ眼でニュースを見ていると、長身のフィリッペ皇太子の脇で微笑んでいる顔に見覚えがある。「あれ?この人、知っている」と思った。

実は私は、彼女を何度かまじかに見たことがある。以前勤めていた職場にに客として来ていたからだ。同僚のスペイン人に「彼女はテレビのアナウンサーだよ」といわれて良く見ると、スタイルもよくなかなかきれいな人だ。どちらかというと個性的な美女ではなく、誰が見ても「美人だね」といいそうな感じだ。あまり印象は無い。いつもハンサムな男姓と来てはいたが、恋人という雰囲気でもなかったような気がする。
その彼女、レティシア・オルテスが皇太子妃に決定したのだ。

が、寝起きだった事もあって、私はどんな状況を報道しているのかなかなか理解できないでいた。
「どうも婚約者として公表しているらしい」とぼんくら頭で理解した時には、二人は手を繋いで見詰め合っていた。それからというもの、どのテレビニュースも新聞もレティシアの顔が映らない日はない。スペイン語がすぐに理解できないのが悔しいが、彼女の今までの活動、例えばイラク戦争やニューヨークのテロ、プレステージ号の座礁など最近の大きな事件には必ず派遣されているらしい。

また皇太子との馴れ初めだろうと思われる映像もよく流されている。王室のインタビューをする場面で収録前にスタッフが、フィリッペにそれぞれ挨拶をしている。彼女も最後に握手をしてにこやかに挨拶を交わしている。これがきっかけでお互いに意識するようになったらしい。

それにしても一番感心したのは、婚約発表からの彼女がいつもパンタロンをはいているという事だ。初めの日は白いジャケットに黒いパンタロン、次からは、「これって制服?」というくらい、いつもいつも白いパンタロンスーツだ。もうマドリッドも冷えるからその対策なのかもしれないが、「コンサートに行くときくらいスカートはけば・・」と言いたくなったのは私だけではないと思う。

ところでそのレティシア嬢は31歳、なんとバツイチだそうだ。両親も離婚していて、彼女はおかあさんとマドリッドの下町に住んでいる。お母さんは現役の看護婦として働いているのだそうだ。パルド宮での婚約式の後、彼女のお母さんが写っていたが、きびきびした感じの女性だ。いかにも少し前のスペイン人という雰囲気で、長い黒髪はカーリーヘア、やっぱり黒いパンタロンを颯爽と着こなしていた。

しかし、日本だったらこういう結婚はまず絶対にありえないだろう。
礼宮殿下が結婚するときも紀子さんが民間の出身なので「ダメなら皇室離脱する」と宣言したと聞いている。最近もオランダの第二皇太子が、結婚のために王位継承権を放棄した。お相手が過去にマフィアと付き合ってと噂された女性だったからだ。たとえば日本の場合、相手が離婚歴のある人だったら、交際自体許されないのではないだろうか。

私も離婚ではないが、母子家庭なので両親が揃っていればいいというものではないと思っているが、日本の常識的考えだと皇室関係者と息子が結婚するのは難しそうな気がする。ま、そんなことはありえませんけどね。
スペインでは、レティシア嬢との結婚について問題とされるのは、彼女が再婚なのに教会で挙式できるのかどうかという点で、再婚という経歴はとり立たされていないようだ。テレビのニュースでは離婚歴をマイナスと考える人は9%と言っていた。

まあ他のヨーロッパ王室ではままあることなので、あまり問題にならないのかもしれない。結婚に関しては、とりあえず、私の聞いたところでは彼女の場合は以前の結婚がCIVIL(民事)なので、教会ではしていない。つまり教会においては、いわば初婚だから問題はないのだとか・・
うーん、スペインの結婚システムは日本とはずいぶん違うようだ。

また、もし以前の結婚が教会であっても法王庁に無効申請するという方法もあるらしい。ただ、これはかなり煩雑な手続きと暇と金が必要らしい。ま、それらを兼ね備えている方々にとっては可能という事だ。どちらにしてもフィリッペ皇太子の場合は問題ないだろうけど。

それにしても、日本だったら日本語でストレートに入ってくるのに、スペイン語だと理解するのに時間がかかるから少々もどかしいが、世紀のご婚礼を今から楽しみにしている。なにせマドリッドで行われるわけですから。私は、ぜったいナマで見てやるぞと今から心に決めているのだ。そうそう簡単に見られるものではないですからね。