ロス・マーゴ・デ・レイジェス

1月6日のロス・マーゴ・デ・レイジェスが終わった。
これでやっとスペインのクリスマス・シーズンが終了したことになる。

ロス・マーゴ・デ・レイジェスとは、東方の三賢帝であるメルチョール、ガスパル、バルサタルが、星に導かれてベツレヘムまでキリストの誕生を祝って贈り物を持ってお祝いに駆けつけた・・という故事からくる行事らしい。
子供達がサンタクロースにプレゼントをもらうように、スペインの子供達はレイジェスにプレゼントをもらうことは前に書いた。前年の12月からレイジェスに手紙を書いてほしい物をお願いするのだそうだ

その昔、三賢帝達は、らくだに乗って旅をしたらしいが、マドリッドではレイジェスが前日の5日の夕方から大掛かりな企業やマドリッド市などが出す山車に乗って、アルカラ門からマイヨール広場まで練り歩く。
あいにく今年は雨になってしまったけれど。

なぜ前日にパレードをするかというと、子供達はレイジェスにプレゼントに何がほしいのか頼まなくてはならないからだ。前日まで手紙を書く暇が無かった子もいるだろうし、目の前にいるレイジェスに頼んだほうが効果があると信じている子供達もたくさんいるそうだ。そのためにパレードの周りには、黄色いバイクに乗った郵便局員が手紙を受け取るために走り回っている。

私達はそのパレードを今まで見たことが無かったので、1度は行ってみよう・・と思っていた。が、息子は「寒いし雨だから行きたくないよー」という。なんて軟弱なやつ!と思ったが、私ももっともだと思ったのでテレビ中継をみることにした。

前日、1月4日の新聞にはパレードの時間、ルート、山車の内容などが大きくページを割いて掲載されていた。それをみると今年はマクドナルド、チュッパチャプス、サッカーのレアル・マドリッド、動物園、デパート、テレビ局など企業の他、公共団体はマドリッド市のほか、郵便局、電話局、国鉄、マドリッドは2012年にオリンピックの誘致をしているのでその委員会、山車の間にはトゥナと呼ばれる伝統的な衣装でセレナーデをうたい歩く一団(これは学生といわれているが、テレビで見る限り学生には見えなかったけど)そして、各レイジェスの山車とその後にプレゼントの山を積んだ本物のらくだ、最後は市の清掃局の車がパレードの撒いた紙ふぶきやあめなどの掃除をすると書いてあった。時間は、6時45分出発で7時半到着とある。

私達は6時半ごろからテレビを見始めた。結構な雨の中、派手な山車が進んでいる。
「これって?」と思っていたら息子が「ディズニーランドのパレードみたい!」という。
確かにお金のかかった派手な山車はエレクトリック・パレードのようでもある。
でも、すべての山車が派手なわけではなく、チュッパチャプス社は、まわりにこのキャンデーの着ぐるみをきたおねえさんを配したスポーツカー1台だった。またサッカーのレアル・マドリッドの山車には選手が乗っているのかと思ったが、マスコットガールのようなかわいいお姉さんばかりでちょっとがっかりした。

テレビ中継には、やたら声の大きな若いお兄さんが(アナウンサー?)が、通りを埋め尽くした子供達やその保護者にインタビューをしていた。「何時から待っているの?」とか「プレゼントには、何をおねがいするの?」といったことから「君はいい子だった?」などと質問する。これは一般にレイジェスに手紙を書くときに「この1年、いい子にしていたので、これこれのプレゼントをお願いします」と書くからだ。聞かれた子供は「もちろん!」と大きく答える。さすがスペイン人だ。

実況ばかりがうるさいテレビに飽きて、私達はだんだん番組に集中できなくなってい
た。息子に「そういえばレイジェスには何がほしいの?」と聞くと「ゲームソフト!」と叫んだ。息子はうちのレイジェスはだれかよく知っているのだ。

いよいよロス・マーゴ・デ・レイジェスが、マイヨール広場に到着すると、ステージが設営されていてそこで挨拶をする。「すべての子供達は愛され、教育を受け健康的な生活を送る権利がある」という児童憲章を唱える。

どのくらいの人がこの様子を見ているかわからないけれど、暖房の効いた部屋で寝そべってテレビを見ているうちの息子も、どこかで雨にぬれて震えている子供も世の中にはたくさんの色々な子供がいるんだなーということに気が付いた。

いい年をして自分が子供の頃、サンタクロースに願ったことや、両親がプレゼントしてくれた今はもうないぬいぐるみやお人形のことなど走馬灯のように浮かんできた。

「しあわせ」ってどういうことだろう?お願いしてからプレゼントをあけることのできる日までのドキドキした不安と期待の入り混じった気持ち、親やレイジェスなど「お願いできる人」を持っていることが幸せなのかもしれない。私は思いつくそういう人がいないので息子に言ってみた。「私もなにかプレゼントほしいんだけど・・」息子は「ふーん」といったまま知らん顔をしていた。

そういえば、以前に森津先生が書いていたではないか!
「自分で自分を誉めてあげて、たまにはご褒美をあげてもいい」って・・
そうだ!1月8日からスペイン中は大バーゲンシーズンに入る。
私も自分にご褒美をかってあげよーっと!
すると、なんだかうまくできているなーという気がしてきた。

だってそうでしょ。さんざん子供にねだられて散財した親は「自分もなんかほしいよー」と思う。でもクリスマスからこっちお金は出て行くばっかりだ。でも「バーゲン」ならなんとかなるではないか。どこだって『50%OFF』なんて書いてあるんだから。

かくして私は仕事が終わった夕方、バーゲンに繰り出すことにした。