異文化

スペインで生活していて、時々感じるのは時間の観念の違いだ。

よくスペイン人の友人に「じゃ、明日の午後にでも電話するね」と言われて、それが夕方の5時や6時などと言うことがよくある。
午前中というのも昼ご飯前なので、だいたい2時ごろまではその範疇だ。

はじめは戸惑って、なかなか掛かってこない電話にイライラしたり、あきらめて行き違いになったことが良くあった。日本だったら午前中は12時前、5時や6時は確かに午後だか、どちらかと言うと夕方に属するのではないだろうか。


これは何もスペイン人とだけではなく、長くスペインに住んでいる日本人の友人でも同じ事だ。しばらくして私は意識的に「何時ごろ」という言葉を使うようになった。そうするとそれが午前でも午後でも気にしなくてすむので気が楽なのだ。


こんな風に時間一つとっても、やっぱり異文化だなーとおもうことがある。

スペインで生活し始めて丸2年を超えると、仕事に対する意識についても、大きな違いを感じる事が多い。その上、現在の仕事場は90%がスペイン人と南米人なので、余計かもしれない。
例えば、私は仕事をなるべく早く終わらせて、楽をしようと考える。

職場の同僚達は、そう考えない。その場の仕事を出来るだけ避けて、その場で楽をしようとする。よく言われる「アスタ・マニアーナ」、「また、あしたね」。

よく言えば『明日があるさ』と解釈できるが、面倒なことは先延ばしで解決しようとしないともいえる。それから責任という意識も私たちとはだいぶ違うようだ。

例えばトラブルがあった時、彼らはまず自己弁護をする。いかに自分の責任ではないか・・ということを主張するのだ。他人に対して、特に客に対してまずは「すみません」という日本人の感覚とはだいぶ違っている。その上、相手がスペイン人だったら双方で言い合って、トラブルは何倍にも大きくなる。ま、いったん解決方法見つかれば、憑きが落ちたようになり、その後は何事もなかったように静かになるのも、スペインならではかもしれないけど、疲れることおびただしい。


そんな時に、数少ない日本人の同僚と愚痴るのは「彼らの辞書には無責任という単語はあっても責任という単語はないよね!」ということだ。


最近、日本から社長が来訪された。
会議や視察など済ませ、数時間後には日本に帰られるというときのことだ。
こちらの幹部や日本人スタッフを集めて、訓示をされた。
こういうとき、日本だったら最後まで社長の話しを聞き、その中で話しの核心を探ったり、理解しようとするのではないだろうか。

ところが、スペイン人は黙っちゃいない。社長の話しの腰を折って「それは・・」と言い訳に勤める。一人が言い出すと後の幹部も黙っちゃいない。「ああでもない、こうでもない」と話しはどんどん発展していって、収集がつかなくなる。社長は通訳を介して話されたので余計だろうが、私は「これじゃ、日が暮れても話しは終わんないし、社長の言ってることなんて誰も理解できっこないよ」と思った。たとえば「皆さんはお客様に対して、もう少し笑顔で対応してください。日本やアメリカのサービス業の会社(たぶんマクドナルドのことかしら)では笑顔のトレーニングをするのですよ」といった時のことだ。


上司のマヌエルは「気分の悪いときまではニコニコしていられない」というし、責任者は「無理して笑ってたら馬鹿みたいに見えるのでは・・それにトレーニングは何時、どこでするのだ」と言い出した。その後は喧喧囂囂・・私は密かにため息をついた。

それから、なぜか笑いがこみ上げてきた。

「じゃ、またあした」こんなとき、この言葉はぴったりだ。