ワールド・カップ


日本の織田秘書から
「韓国対スペイン戦についての、スペインの人たちの感想を聞きたいなー。あれは、ひいきじゃないかと思うんだよね。スペインの人、怒ってないのか、」

とメールをいただきました

その通り、スペイン国民は怒っていました。

そう、韓国戦はまったくの不正です。リプレイを見たってわかります。「ゴーーーール!!!」かと思ったが、ラインを割った、と判定され無効。「どうなってるんだ!審判はっ!」と、私もテレビに向かって叫んでしまった。

つい熱くなったが、あの試合は、私も悔しくって、悔しくってしかたなかった。

始まりは、6月2日にスペインが52年ぶりの初戦突破だった。この快挙でスペインは一気に加熱した。私はあまりサッカーには興味はなく、普段テレビで試合中継を見ることもないので、ワールド・カップと言われても、ただ周りが騒いでるなー、ぐらいの感覚しか持っていなかったし、正直いって、いつから開催されるのかさえ知らなかったくらいだ。

しかし、今年は違った。
宿敵のフランスや前評判の高かったアルゼンチンが負けたことで、ますます熱くなっていったスペインに、いつしか私も巻き込まれてしまったのだ。
当初のスペイン人たちの下馬評では、決勝戦は「ブラジル対スペイン」。スペインは、同じヨーロッパ圏の国より南米に強いので、これでスペインは優勝するという意見が大半だった。これは今回に限ったことではなく、そのたびに「スペイン優勝」というシナリオが 語られていたわけらしい。
勿論、これはスペイン人の独断と偏見にもとづく予想ではあるが。

ま、中には親切なスペイン人もいて、私に気を使って「日本もよくやってるよ。もしかしたら決勝戦はスペイン対日本じゃない」などと、お世辞をいってくれる人もいたが。

当然、職場でも盛り上がっていて、スペイン戦のある前日からは、スペイン人の同僚達に延々と試合の予想を聞かされ(結果はスペインが必ず勝つのだが)、最後には「みやは、どっちを応援するのか?」と迫られた。だが、不思議と勝ってしまうと、興味がなくなるのか「昨日の試合は・・」なんていう話しはほとんどなかった。

対韓国戦のあった6月22日は、テレビの放映が朝の8時半からだったので、その後、いつものように地下鉄で仕事場に向かった。すると、地下鉄の中で、なぜか皆が私の顔を見ているような気がして「変だなー」と思っていた。

が、その理由は、すぐにわかった。仕事場に着くと、日本人の上司が「何かありませんでしたか?」と駆け寄ってきたのだ。彼は、徒歩での出勤途中に、バールの前を通りかかったら「韓国のばかやろー!」と怒鳴られ怖い目にあったらしい。なにしろ、スペイン人にすると日本人も韓国人も中国人もぜーんぶ一緒に見える上に、敗戦のショックで目がくらんでいたかもしれない。なるほど地下鉄の中で、私は韓国人と思われたのだろう。

スペイン人の同僚達は

「みや、日本の旗をふってかえるか、顔に日の丸を書いて家に帰れ」とアドバイスしてくれたが、その日、仕事場では、いかに審判がいんちきだったか、韓国は審判を買収したに違いない、ということに盛り上がり、スペイン人の上司は自分のオートバイを
「もーやだ!売ってやる。だってあれは韓国製だ!!」と怒鳴るし「韓国大使館から(お得意様です)予約が入っても断れ!!」と叫んでいた。

しかし、その日を境に、スペインではでワールド・カップは終わってしまったらしく、急速に熱は冷め、話題にも上らなくなった。まさに熱しやすく冷めやすい国民性だなと妙に関心したが、後を引かないのはいいことなのかもしれない。


最近はひざしも強くなって、すっかり真夏の陽気だが、こんな時期にテラスに座って
お茶をしていると「極楽、極楽」という気分になってくる。まだ昼の11時だって言うのにもうビールを飲んでいる人たちも多い。こんなとき私は「あー、スペインに来てよかった!」と思うのだ。単純なものです。さて、最近のスペインでの話題は「バカンスはどこにいくのか?」ということです。ワールド・カップのことなんて遥か彼方というところです。